USELESS

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USELESS

なんというか、夜、外歩きながら音楽を聴くのが好きで、もう帰りたくないと思ったとき、俺は宙に舞い上がる。先程もどんどんのぼっていった。ブラッドオレンジを聴きながら。風が、気持ち良かった。家やビルや店とかマンションはどんどん小さくなってった。誰が言ってたのか忘れたけどこの世は深刻に考えるには余りにも小さい。漂っているうちに東京タワーが見えてきて、鉄塔のフチに着地し、座った。俺の視力はもう見渡すのに慣れていた。すると自分の部屋が見えた。窓の奥で自分が、それは自分だと分かった、その自分は何かダッチワイフのようなものを相手にことに及んでいた。やがてそれは果てた。ぐったりとして動かなくなった。吐き気がしてきて地上に降りたときには人類が消えたあとだった。どれくらい時間がたったのか分からない。まだヘッドホンから音楽は鳴っている。アルバムは最後の曲を迎えた。The sun comes in, My heart fulfills withinと歌っている。ところでこれは誰の曲なんだろう?繰り返される歌詞は、だんだんと言葉には感じられなくなった。俺のあたまから言葉が消えていく。しかしなぜか幸福に感じられた。歩いていると、コンビニを見つけたので入った。冷蔵庫から[水]を取り出して飲んだ。この世のものとは思えない程うまかった。奥の棚に置いてあったライターを手に取って、外に出た。目についた立て看板ひとつひとつに火をつけていった。それらは簡単に燃え上がった、たぶんもう必要ないからだと思う。そんな感じなんだよな