USELESS

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技能の習熟は抽象化だと言えるけど、創造的解決の高速化には構造化が欠かせないみたいな話で、例えば一年前はあんなに遅かった(4時間くらいかかって実装したとか)が今は1時間でサクッとできるというのは、脳の神経がつながって意図の抽象化による呼び出しコストの圧縮があるとは思うけど、それはあくまでやることが決まっている前提での話で、やることを決めること、どうしたいのか、どうするべきなのかを決める際には、ストーリーとしての導出があると思っていて、事象を構造化してそこに血肉を与えていくようなプロセスがある。つまり、具体の間の因果関係ではなく、抽象的なレベルでの因果関係の元で、具体が降ってくるイメージ。分かるかな。優れたクリエイターや問題解決者が何故あのようにアイデアが降って湧いて湯水のように湧き出てくるかというと彼らが内に持っている神話的な元型にあるような印象があって。もし具体的なレベルでいそいそと考えていたら、それはおそらくとても遅いのでアイデア量産機のようには見えないだろう。 なぜこんな話をしているかというとブラックジャックがKindleのアンリミだったので読んでて。前10巻はタダで、後半は買った。もはや古典だね。小学生の頃に図書室でみんな読んでたよな。驚くに値するのは、手塚治虫が当時の仕事量をこなしながら、クオリティを担保しながら1話完結の短編を描き続けてたことだ。25巻までで、全部で250話くらい。これだけの話を書くのは本当にアイデア製造機のように聞こえるのだけど、まあ1巻から最終巻まで一気に読んでたのもあり、何かしらの話のパターンはだんだんと見えてくる。漫画家はストーリーの原型となる神話的構造を頭の中に所持しており、それを医療に絡めたドラマの形で実装したような印象がある。主人公の天才外科医ブラックジャックを問題解決者と捉えると、話の筋にはまず問題(あるいはそれらしいもの)が提起され、その次に障害が提示され、その後で患者の本当の問題が明らかにされ、そうして解決の糸口が提示されて話が終わる。そんなパターン。もちろん構造的なバリエーションはあるけど。ハリウッド映画やベストセラーにも神話的な構造、冒険への誘いから始まるみたいなものがあるけれど、それと似たようなものがある。で、クオリティを保ちながらアイデアの量産ができたのが手塚治虫。この構造を外すと、どんな漫画家でも遅筆になるだろう。 で、まあ仮説なんだけど作り手を2種類に分けるならこうした多作型、元型を実装することにかけて技があるような人と、構造を取っ替え引っ替えしてさらには具体的な内省から生まれるような構造の転覆を狙うような人もいると思う。あんまり自信はないですよ。両者はオーバーラップしていると思うので。まあなんか意識的になれると儲かったり儲からなかったりするかも。デジャブが起こるまでやるとか、エピソードの持ち方を変えてみようかなとか。ところで外科手術とデバッグ(あるいはリファクタリング)って似ているかもなとブラックジャック読んで思った。私も1000万くらい請求したい。たぶんそういうこと。インセンティブとコスト。